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芙蓉/不朽之音楽〈2-0〉

太下義之太下義之│Yoshiyuki Oshita9 Aug.2021

この「芙蓉/不朽の音楽」と題したエッセイは、好きな本を毎日一冊・計7日間Facebook にUPするという「7日間ブックカバーチャレンジ」の仕組みをリミックスして、書籍の代わりに音楽を紹介するという、極私的な音楽エッセイである。
2020年5月に、最初にこのエッセイを執筆した契機は、新型コロナウイルス感染症の拡大にあった。昨年、「不要不急」の外出自粛を政府が要請したことを受けて、芸術分野がいち早く応じたことで、芸術文化は感謝されるどころか、むしろ「不要不急」なものの象徴とみなされるようになってしまったからである。もちろん、芸術文化は「不要不急」なものではなく、人間にとって絶対に不可欠なものであると私は考えている。
すなわち、「不要」ではなく、「繊細な美」を花言葉とする「芙蓉」。そして、「不急」ではなく、「不朽」の音楽。
そこで、「7日間ブックカバーチャレンジ」にならい、今までほとんど聴きかえすことのなかった自分のLPレコードやCDのストックの中から、どちらかというとマイナーな存在で、できるだけ多様な地域・文化の音楽を選んで、執筆・公表したのがこの「芙蓉/不朽の音楽」というエッセイである。
実は前回の一連のエッセイは予想外の反響を得て、「ぜひ続編の執筆を」という応援もいただいていた。しかし、日々の雑事に時間をとられているうちに、なかなか続編に取り掛かるきっかけをつかめないまま時間が過ぎていった。
ところが、そんな中で、一つの契機が到来した。東京オリンピックの開会式と閉会式である。多くの人が感じたように、オリンピックの開会式は完全なる失敗であったと私も思う。このことについては稿を改めて記したいのだが、一方で、閉会式はいったいどうなるのであろうか、という懸念が沸き起こってきた。
オリンピックの閉会式は、約2週間にわたるオリンピック競技大会の閉会だけでなく、実は文化プログラムのフィナーレを飾るという役割もある。近年のオリンピックの中では、2012年のロンドン・オリンピックの閉会式が特筆すべき内容であった。ロンドン五輪の閉会式は、「イギリス音楽のシンフォニー」というテーマのもと、イギリスを代表する、世界的な知名度のミュージシャンたちが一堂に会したライブ・パフォーマンスであり、公式アルバムもリリースされた。
東京オリンピックの閉会式も、このロンドンの時のように、日本を代表するミュージシャンたちによる音楽の祭典とすべきであったのではないか。同時に、開会式において欠如していたコンセプトや思想が、閉館式にこそ絶対に不可欠であろう。
そもそも1964年の東京五輪は、第二次世界大戦に敗戦後、日本が急速な復興を遂げた姿を国際社会に発信する好機となった。いわば、オリンピックは、「新しい時代の始まり」の象徴していたのである。
これに対して、2020年の東京五輪はどうであろうか。メイン・スタジアムの設計及びエンブレムのデザインが撤回されたほか、組織委員会の会長、開会式の統括責任者、演出家等が辞任や解任が立て続けに生じた。その他、弁当が大量に廃棄された問題など、細かな不具合をあげると枚挙にいとまがない。
これらの一連の事実が意味するのは何であろうか。それは、もはや従前の社会システム全般が機能不全となっているということではないか。言い換えると、2020東京五輪は「古き時代の終わりの始まり」を象徴するイベントであったのである。
こうしたことから、閉会式の基本コンセプトは、「古き時代に決別するエレジー(挽歌)」と設定したい。この閉会式をもって、日本は今までの「思い込み」から解放され、ようやく「戦後」を終わらせることができるのである。
こうしたコンセプトに相応しいのは、ロンドン大会の時のような現役のミュージシャンではなく、故人のミュージシャンや既に解散等で活動していないグループの音楽であろう。
また、日本が世界に誇るコンテンツは音楽だけではもちろんない。コンテンポラリー・ダンスや舞踏等のパフォーミング・アーツも国際的に高い評価を得ている。そこで、各回に取り上げる音楽に、それぞれ相応しいと思われるパフォーミング・アーツを組み合わせた提案を試みてみたい。
このささやかなエッセイが、実体のオリンピックでは達成できなかった「レガシー」について、今一度考える契機になれば幸いである。

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