2020東京五輪の招致が決定されたIOC総会において、滝川クリステルが「お・も・て・な・し」とプレゼンテーションしたのは、2013年のことであった。この「お・も・て・な・し」に応えて、コロナ禍にもひるむことなく、世界のさまざまな国・地域から多くの選手や関係者が来日してくれた。だから、閉会式においては、これらの五輪に参加してくれたみなさんに真先に感謝の言葉を贈るべきであろう。
そして、感謝の言葉を贈るのであれば、この曲が最もふさわしいのではないか。
忌野清志郎がリーダーを務めるRCサクセションのアルバム『RHAPSODY』に収録された「よォーこそ」である。1980年に発表されたこのアルバムは、日本のニュー・ウェイブ・シーンの幕開けを担った。
「よく来てくれた わざわざここまで よく来てくれた よォーこそ」
この部分と、それに続くメンバー(チーム)紹介の部分を、各国・地域で活躍した人やグループを讃える内容の歌詞に替え、それを清志郎の声質のまま、AIによって各国語に翻訳して歌うのである。もちろん、全部の国・地域をそのまま順番に歌っていたら、終わるのは真夜中になってしまう。そこで、各チームは競技場の10か所程度の場所から同時並行で入場し、超指向性のスピーカーを配置して、それぞれの場所だけで聴くことができるようにする。これこそが、「お・も・て・な・し」であろう。
RCサクセション「よォーこそ 1980」
もう一曲は、エルヴィス・プレスリーが初めて主演した映画の主題歌として有名な「Love me tender」(1956年)のカバー曲。同曲を収録したアルバム「COVERS」は1988年当初東芝EMIから発売される予定だったが、突然中止となった。原子力産業に携わる親会社からの圧力がかかったのではないかと噂された。検閲である。その後、新聞に「素晴らしすぎて発売できません」という広告が掲載され、同年に別のレコード会社から発売されている。
RCサクセション「Love me tender」
喉を振り絞るような独特な声と歌いまわしの忌野清志郎がまだ存命であれば、今年で70歳の古希。音楽性もさることながら、スピリットそのものが、「ロック」であった稀有なミュージシャンであった。
これらの音楽を背景に、オープニングのパフォーマンスを務めるのは、近藤良平率いる「コンドルズ」。コンテンポラリー・ダンス界のドリフターズの異名をとるコンドルズこそ、閉会式のお祭り気分に相応しいのではないか。そして、ボランティアのみなさんも、ポンチョの下に学ランを着ておき、ポンチョを脱いでダンスに参加していただきたい。
これがまさに、芙蓉の花言葉のごとく繊細で、不朽なる音楽。
(参考サイト)
J-CASTニュース「忌野清志郎の反原発ソング 人気急上昇、CD売り切れ店舗も」(2011年4月13日)<https://www.j-cast.com/2011/04/13093008.html?p=all>