YELLOW MAGIC ORCHESTRA(以下、YMO)は、細野晴臣(ベース)、高橋幸宏(ドラムス)、坂本龍一(キーボード)の3人で1978年に結成されたテクノ・ポップ・グループである。1980年代前半に社会現象となるほどの人気を博した。今回紹介する中では、最もメジャーなグループ。1983年に「散開」のライブツアーを実施後も、一時的に「再生」(再結成)をしている。
1979年9月、デビュー・アルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』(同年11月)の発売前であったが、チューブスというバンドの来日公演のフロントアクトとして、中野サンプラザ・ホールで行われたライブを私は体験している。それまで聴いたことが無いタイプの音楽に衝撃を受けたことを今でも覚えている。
YMOの音楽は、コンピューターによる自動演奏を背景に、テレビゲームのような無機的なサウンドを奏でるシンセサイザー、正確であるがゆえに、グルーブ感が薄く軽快なリズム、多くの外国人が東洋風と感じるであろう、たおやかなベースラインによって構成されている。評論家の阿木譲が命名した「テクノ・ポップ」というジャンルを代表するグループであり、国内外の多くのミュージシャンに影響を与えた。ただし、音楽面での直系のフォロワーが登場していないことから、あらためてYMOの音楽の独自性が浮かび上がってくる。
ここでは、『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』(1979)収録で、日本国内での最初のシングルの「TECHNOPOLIS」を紹介したい。ヴォコーダーを通した「TOKIO」という無機的な声で始まるこの曲は、まさに東京オリンピックの式典の場に相応しい。「T・E・C・H・N・O・P・O・L・I・S」のフレーズから垣間見えるのは、実現したかもしれない東京の未来の姿である。
なお現実問題としては、仮に再結成したとしても、YMOがオリンピックの閉会式に呼ばれることはなかったであろう。それは何故か。坂本龍一が核兵器廃絶の社会運動を行っているからである。
私はこうした事象を「隠された(排除の)ルール」と名付けた。そして、広義の日本の安全保障に関する事項が、政府(官邸)としてのセンサーになっており、それに抵触すると、排除の論理が発動するという仮説を提示した。世界的に著名な音楽家であっても、「日本の論点」に抵触すると、政府主催のイベントから排除されてしまうのである(太下2021)。
YELLOW MAGIC ORCHESTRA 「TECHNOPOLIS」
もう一曲は、YMOの2枚目のシングル「RYDEEN」を、オリジナルではなく、VMO (Violent Magic Orchestra)によるカバーにて紹介したい。同曲のカバーは多数あるようだが、中でもこのバージョンがカッコ良いと思う。
VMO a.k.a Violent Magic Orchestra「RYDEEN 雷電 / YMO Yellow Magic Orchestra」COVER
さて、このYMOの音楽には、麿赤兒の率いる大駱駝艦の、ストイックでありながら、スペクタクル性に富むパフォーマンスが意外と合うのではないか。剃髪、白塗りによる独自の舞踏形式は、「Butoh(ブトー)」と呼ばれ、世界語となっている。ちなみに、大駱駝艦は来年2022年で結節から半世紀となる。
これがまさに、芙蓉の花言葉のごとく繊細で、不朽なる音楽。
(参考サイト)
SONY Music Unlimited「YMOヒストリー」
<https://www.sony.jp/music-unlimited/special/ymo/introduction/>
太下義之(2021)「隠されたルール:通底する文化庁の補助金不交付と日本学術会議の任命拒否」<https://bijutsutecho.com/magazine/insight/23742>