今回紹介する音楽の中で、最も知名度が低いと思われるのが、このアフター・ディナーであろう。アフター・ディナーは、1981年にHACO(作詞、作曲、ヴォーカル)を中心に神戸で結成され、1983年、ジャケットのアートワークも素晴らしいファ-スト・アルバム「GLASS TUBE」をリリ-スした。
1984年には、「GLASS TUBE」とファ-スト・シングルを合わせたヴァージョンの海外デビュー盤「AFTER DINNER」を英国レコメンデッド・レコ-ドからリリ-ス。世界で最古の歴史を誇る週刊音楽雑誌であるメロディー・メーカー誌において、「あいかわらず西洋ポップスべったりだった日本の音楽シーンを覆そうとする小さな底流を築いた」と絶賛された。1988年、ライブをカセット化した「The Souvenir Cassette」をリリース。その後、1991年の活動停止まで、1980年代を駆け抜けたバンドである。
アフター・ディナーの音楽は、テープ・コラージュを駆使した、アヴァンギャルド、かつ、ときどきポップなサウンドであり、なんとも形容し難い。たとえて言うならば、夢の中で迷宮をそろりそろりと進んでいったら、突然に巨大な伽藍が表れ、それがまるで重力にあらがうかのように、天空に向かって崩れていく様を目にしているような感じ、とでも表現すればよいであろうか。
ちなみに、かつてのメンバーであった宇都宮泰のサイトには、「最終音楽を目指す」と記載されている。
After Dinner「Glass Tube」
HACO「Anesthesia Love」
もう一曲は、HACOの最新作から、「Anesthesia Love」。言霊が舞う音楽。
このアフター・ディナーの音楽には、コンテンボラリー・ダンスと呼んでしまうのには、あまりに独特かつ強靭な身体の動きを表現する、勅使川原三郎のダンスをコラボさせてみたい。
これがまさに、芙蓉の花言葉のごとく繊細で、不朽なる音楽。
(参考サイト)
Improvised Music from Japan「After Dinner(アフター・ディナー)」
<http://www.japanimprov.com/haco/afterdinner/afterdinner-j.html>
宇都宮泰<http://www.utsunomia.com/y.utsunomia/profile.html>