The Sakishima meetingは、沖縄・石垣島の白保出身で、八重山民謡の唄者(うたしゃ)・新良幸人と、沖縄・宮古島の久松出身で、レパートリーのほとんどを生まれ故郷宮古島の方言(ミャークフツ)で歌うシンガーソングライター・下地イサム、この二人ミュージシャンの邂逅によって生まれた音楽ユニットで、2004年頃から不定期で活動を開始している。
一見すると強面の新良は、実はとても繊細な神経の持ち主で、一方で、クールな二枚目に見えながら、実は大らかで優しい下地とは、とても絶妙なコンビをなしている。
ユニット名のSakishimaとは、「先島諸島」のこと。琉球諸島のうち、南西部に位置する宮古列島・八重山列島の総称である。
ユニットを代表する曲の一つである“SAKISHIMA のテーマ”は、オフィシャルな音源が残念ながらアップされていないようであるが、ライブの音源はいくつか確認することか出来た。いずれも音質は満足がいく水準ではないが、中でもベターな映像がこれ。
私が専門とする「創造都市論」においては、都市・地域の発展には、文化的多様性と、それに基づく創造性が重要な要因とされる。そうであるならば、日本という国にとって琉球やアイヌ等の文化は極めて重要な文化的存在となるはずだ。
実は私は、The Sakishima meetingと一緒に、スペイン・ガリシア州の州都SANTIAGO DE COMPOSTELAで開催されたWOMEX 14に参加したことがある。WOMEX(World Music EXPO)とは、1994年から開催されている世界最大のプロフェッショナル向けのワールド・ミュージックのトレードフェアである。
当時私は、沖縄アーツカウンシルのアドバイザリー・ボードの委員長を仰せつかっており、琉球音楽の振興のため、ワールド・ミュージックマーケットに琉球音楽を送り出すことを提案した。それがWOMEXへの参加というプロジェクトとなったのだ。
結果から言うと、このチャレンジは大きな成功には結びつかなかった。WOMEXに参加して理解できたことであるが、WOMEXは民族音楽、伝統音楽を対象としているとはいっても、その実態はダイナミックで、パワフル、ダンサブルなサウンドが主流であったのだ。
もっとも、琉球と言っても、それは単一の文化ではなく、本島と先島の間には根深い関係が横たわる。そして、そのコロニアルな構造は、琉球と薩摩、地方と中央、日本と西欧列強との関係とも重層的にシンクロしてゆく。
「先島ぬヨー、夕間暮(ゆまんぐぃ)風(かじ)ぬ涼(しだ)さ ああ、先島 幾世(いくゆ)までぃん」という部分で、艶やかでエモーショナルな新良の唄声と、下地のファルセットが一瞬交錯する場面は限りなく美しい。たとえ宮古の言葉を理解できなくても、その思いは理解できるような気がする。
これがまさに、芙蓉の花言葉のごとく繊細で、不朽なる音楽。