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芙蓉/不朽之音楽〈6〉──Angelo Branduardi “Il Funerale”

太下義之太下義之│Yoshiyuki Oshita24 May.2020

アンジェロ・ブランデュアルディは、1950年生まれのイタリアのシンガーソングライター。彼のような歌手のことをイタリア語で「カンタウトーレ:Cantautore」と呼ぶが、これは「Cantante:歌手」と「Autore:作者」が合成された単語。もっとも、ブランデュアルディは、「吟遊詩人」という表現の方がより相応しいように思う。

この曲が収録されているアルバム『東方の市場にて』(Alla Fiera Dell’est)は、ブランデュアルディの3rdアルバムで1976年にリリースされた。このアルバムの英語版の詩をピート・シンフィールド(ex. KING CRIMSON)が担当したことで、英語圏でもブランデュアルディの人気が高まっていった。
 このアルバムのタイトルが示しているように、ブランデュアルディの音楽は、地中海音楽に影響を受けていると言われる。ヨーロッパと北アフリカ、そして西アジアを繋ぐ地中海では、古くからさまざまな文化、言語、民族、宗教が交差してきた歴史がある。そして、ブローデル『地中海』(1949年)が明らかにしたとおり、人間やその集団である国家を動かす全体的なシステムとして、この「地中海」は機能してきた。(おそらく、かつての日本海も)
 そんな地中海の音楽文化を継承するブランデュアルディの曲を聴いていると、地中海の伸びやかな光景が目に浮かんでくるようである。リスナーの想像力を触発し、旋律が流れてきたとたん、周囲の時空間を変質させてしまうような影響力のある音楽。そして、故郷でも何でもない地中海が、妙に懐かしく感じられる。
 さて、ここで紹介する“Il Funerale”とは、「葬式にて」という意味であるが、具体的な死を歌っているのではなく、象徴的な歌詞のようである。前半はインストゥルメンタル。曲の半ばから聞くことが出来るブランデュアルディの歌声は、繊細で震えているかのようでありながら、しかし力強い。それはリスナーに優しく語りかけているようでもある。
 クラシカルかつ典雅でありながら、同時に現代的に洗練された感性が共存している音楽。それは、共同プロデュースを担当したMaurizio Fabrizioのソロ作品を聞いてみると、彼の力量に負うところが大きいことが理解できる。
 また、同曲のアニメーションは、ユーリ・ノルシュテイン監督の名作「霧の中のハリネズミ」(1975年)を彷彿とさせるような優美で感性を表出している。
 なお、この曲は、『1979 il concerto』というライブアルバムにも収録されている。元々は白血病に苦しむ名ヴォーカリストDEMETRIO STRATOSへの治療支援の資金を集めるために企画されたが、開催前日にデメトリオがなんと急死し、皮肉にも追悼コンサートとなってしまった伝説的なコンサートを記録したものである。

これがまさに、芙蓉の花言葉のごとく繊細で、不朽なる音楽。

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