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芙蓉/不朽之音楽〈7〉──Tone Hulbækmo & Hans Fredrik Jacobsen “So Ro Godt Barn”

太下義之太下義之│Yoshiyuki Oshita25 May.2020

トーネ・フルベクモ(TONE HULBæKMO)は、ノルウェーのミュージシャンで、シンガーでもある。トーネが演奏するのはハープと、やはりノルウェーの伝統的な楽器であるクラビックリラ。これらの楽器を、ノルウェーのフォーク・ミュージックや彼女自身のオリジナルソングに組みこんで使用​​している。
 トーネは、1980年代まで絶滅していたハープを、博物館の古楽器からレプリカを作って、演奏し始めた。こうしたことからノルウェーにおいて、トーネの名前は「ハープのルネサンス」の代名詞ともなっている。また、彼女のボーカルスタイルは、ノルウェーのØsterdalen地域の伝統的な歌唱法に、近代的なひねりを加えたもののようである。
 共演しているHans Fredrik Jacobsenは、ノルウェーの伝統的なフルート奏者で、フルート以外にもさまざまな楽器を担当している。また、ハンスは編曲家でもある。ちなみに彼はトーネの公私にわたるパートナーでもあり、彼らの子供二人も音楽家となっているので、まさに音楽一家である。
 それはさておき、上述した二人が1988年にリリースしたアルバムが『Langt Nord I Skogen』で、日本語では「森の極北」という意味。どうやらノルウェーに伝わる民話を題材としたコンセプト・アルバムのようである。アルバムのどの曲も、子どもたちに語りかけているかのような柔らかさに満ちている。
 また、モーリス・センダック(Maurice Sendak)の『かいじゅうたちのいるところ』の絵を、よりファンタスティックに仕上げたかのような、森の精や動物たちを描いたジャケット・アートは、このアルバムの曲が素晴らしいことを予感させるようなジャケットである。
 このアルバムのラストの曲が“So Ro Godt Barn”。ノルウェーの伝統的な子守歌で、タイトルの意味は「おやすみ、よい子」。ノルウェーの合唱団等もこの曲を歌っているので、当地では有名な曲なのであろう。

もし初めて聴いたのだとしても、かつて何度も聴いたことがあるように感じる、懐かしく素朴な旋律。そして、思わず夢見心地となるような、美しく優しい歌声。いわゆる「癒し系」と単純には一括りにできない音楽がここにある。
 数年前、「満足感や幸福感を生み出す、心地よい質と心地よい生活」という意味のデンマーク語hyggeが話題となった。Oxford English Dictionaryは毎年、その年を象徴する「Word of the Year」を選定しているが、2016年の候補にこのhyggeが選ばれていたのだ。日本ではもっぱら、デンマーク語として紹介されていたようであるが、実はノルウェー語でもこのhyggeは使われている。トーネの音楽を聴いていると、hyggeの精神を、言葉を介さずに理解できるような気がする。

これがまさに、芙蓉の花言葉のごとく繊細で、不朽なる音楽。

参考サイト:https://nordic-harp-meeting.eu/tone-hulbaekmo/
https://languages.oup.com/word-of-the-year/2016-shortlist/

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